2013-09-01から1ヶ月間の記事一覧

昔書いていた詩(104) 「冬に向かう男 」

冬に向かう男 フィルム会社の煙突 その上で現像された秋が 逆立ちすると 11月の 空のスクリーンに 投影され ミズナラの林に 墜落し 男を分娩する 二重写しに 男と女を 重複した 地質技師が アーケードの街を過ぎ ギクシャクと 歩きながら 独白するそばで …

今書いている詩(104) 「たろうさんのガビチョウ(画眉鳥)」

たろうさんのガビチョウ(画眉鳥) 小さな砂場の上に 重さで潰れたキュウイの パイプ棚がある いつ切ろうかと思っているうちに たろうさんは帯状発疹になり 洋子さんが自分できると言い始めました ガビチョウの番(つがい)が 餌台から飛び移り キュウイの枯れ枝…

昔書いていた詩(103) 「失業者」

失業者 働いている時 僕は潜在的失業者だと思っていたら 今度は本当の失業者になった 職安に失業保険の認定に行ったら 僕と同じ顔の男がいて 同じ認定番号を持っていた メガネをかけた心臓の悪い 紹介係は黙って判を押していた 僕の名前を呼ぶので ハモニカ…

今書いている詩(103) 「たろうさんのリメンバー」

たろうさんのリメンバー 失われたものは何ですか 身体ですか 魂ですか 記憶ですか なぜ魂は人に宿ったのですか いつからですか わたしたちの祖先が 立ち上がり歩き始めた時からですか 神はなぜ人を選ばれたのですか 身体が神に似ているからですか 神は姿形が…

昔書いていた詩(102) 「男」

男 10円銅貨を切符販売機に入れてみたら 切符が出ないで電車が走り出した 駅長のいない駅で駅員に聞いたら 「汽車は来ない貨車に乗れば」と言うのだ 貨車に乗ったら枕木のない線路を走っている 運転手も車掌もいない荷台で 牛のように黙っていたら 俺は背…

今書いている詩(211) 「たろうさんの不思議な縁」

たろうさんの不思議な縁 ファンヒーターが唸って 加湿器の湯気があがる 雲に日差しが遮られて 寒くなった午後のリビングで ひとりのたろうさんは ボンヤリと考えます 夫婦の縁とは 親子の縁とは 友達の縁とは 別れた恋人との縁とは 何だろう 前世で果たせな…

昔書いていた詩(101) 「夜明け」

夜明け 眼を ゴリゴリさせながら 出かけた 夜明けは 俺の瞼のように 重い 過去の駅で 片目の犬が 歩いていると 犬殺しが 車で やって来るのを 俺は 見る 西へ走る 木製の電車が トンネルを潜る 俺は 夜明けの モグラになる 辿りついた 存在の谷は 紅葉で ダ…

今書いている詩(101) 「たろうさんの輪廻(りんね)」

たろうさんの輪廻(りんね) たろうさんへ「…奇遇ですね…」と 嬉しいメールがありました 「…奇遇ではありませんよ、今の世に 共に生きているのは前世でも 一緒だったのです…」と返信しました そうなのです たろうさんは 人は輪廻を繰り返すと考えています この…

昔書いていた詩(100) 「夜」

夜 窓枠の外で 眠りを妨げられた 水銀灯が目醒める ベランダのテントが 鉄骨だらけになる その下で85歳の 老人が死んでいる 皮を剥がれた 猫が ヨロヨロと あゆむ 「祭りだ 祭りだ」と 女達が台所で 酒を飲みながら 騒いでいる 俺は 針の穴から 夜の女を …

今書いている詩(100) 「たろうさんの神さま」

たろうさんの神さま たろうさんの神さまは語ります 「たろうさん わたしはあなたの心の中に いますよ 心を通じてあなたに語ります わたしは姿を顕わしません 姿形はないのです あなたのインスピレーションがわたしの囁きです」 たろうさんはいつも考えていま…

昔書いていた詩(99) 「パン」

パン 山をバターのように パンの上に擦り付けた 辺りに 乳白色の プラスチック板の 空がある そのあたりの 厚い重なりの 雲の割れ目から 油絵の看板が 落下するのを 16世紀が見ていた 朝焼けを見ていた 鳥は 雨が降るのを知る 啼かない 羽ばたかない ガリ…

今書いている詩(99) 「たろうさんの娘(2)」

たろうさんの娘(2) 娘が休みで 彼氏が夜勤だから 車で送ってくる 娘が帰ってくるのです 明日は家から仕事に行きます ヘルスメーターの電池も換えました 首をキリンさんのようなが~くして待ってます たろうさんは少し寂しい 車で帰ってゆくたびに 娘さんの…

昔書いていた詩(98) 「朝」

朝 産声を上げない 子牛の生まれた朝に U型のフィルターで囲まれた 光線の束が 栗の木を襲い 秋の奇型児を 照らしているのだ とてつもない 欠伸の連続と 女の 不連続な愛 そんな時刻に 花火職人は 2.5号玉を 打ち上げる それが 好きだというのではない 仕…

今書いている詩(98) 「たろうさんの住む町」

たろうさんの住む町 八王子市街の東から朝日が昇り 南の高尾山の上を通り 西の夕焼けの里に 夕日となって沈みます (本当は地球が西から東に動いてる) 富士山は邪魔されているので見えません その犯人は高尾山です 洋子さんは江戸っ子だから 富士山の見えない…

昔書いていた詩(97) 「暗号」

暗号 もう話すことなんか 何も必要でないのに 欲しいものは腹話術の 人形でなくて 君の 24歳の肉体なのに 三千年の 遠方より やってきた 愛のネロには パピルスの 暗号解読書と 計算尺がいるのだ 醒めたコーヒーのそばで 「ミルク入らないよ」と云って 出…

今書いている詩(97) 「たろうさんの廃品回収」

たろうさんの廃品回収 「…ラジカセ・ミニコンポは無料にて回収いたします…」 今日も廃品回収の車が宝生寺団地を廻っています 「毎度ありがとうございます 本日は人間の廃品回収に おうかがいしておりま~す」という日が来るのでしょうか 人間は健康でなくて…

昔書いていた詩(96) 「鳥」 「雨」

鳥 そのとき 羽ばたくのは 鳥であり 人間である 予定した 行動だと言うのは いつも人間だけで 鳥が 羽ばたくのは 自由 「おおーい左手をあげろ」 光はその中に 吸い込まれて 人も鳥も 自由に 羽ばたく そのとき もうひとりの 僕は 鳥であり 人間である 雨 俺…

今書いている詩(96) 「たろうさんから45歳のあなたへ」

たろうさんから45歳のあなたへ 45歳のあなた 私の歳までは 20年ありますね 長いと感じるか 短いと感じるかは あなた次第ですよ 私の歳になると1年は短いです カレンダーは直ぐに12月を 捲ることに成ってしまいます 若い人は長く感じることでしょう…

昔書いていた詩(94) 「闇」

闇 夕闇は まだ 木の陰に座っていた ある者は 葉の裏に行け ある者は 洞穴に行け 光は 薄くなり 尾は 断ち切られ 断ち切られ 消失をやめない 光は 闇に捕食され ほとんど 両肺がない 天地は逆転した 「呼吸法を変えねば死ぬな」 ジャイロコマも 此処では通用…

今書いている詩(94) 「たろうさんの地球」

たろうさんの地球 朝と夜の始まりと終わりは 地の果てでヘラクレスが いまだに大きなカーテンを 開け閉めしているのだ 太陽は東から西に 動いているのだ たろうさんは海を あまり見ないので 水平線が平でないなんて信じない 名工は「…水平の水が曲がっている…

昔書いていた詩(95) 「海」 「時計」

海 ひとりで 海へ行った 僕の 記憶の海は 汗と塩の 繋がりでしかなかったが 風が吹くと 荒い磯の波は 白く砕けた 夢に変わる イガイガ頭のウニは 岩の 割れ目に ひっついていたが それが 僕には 必死の 努力のように 思えて溜まらない 僕は黒砂の上に 立って…

今書いている詩(95) 「たろうさんの物干し竿」

たろうさんの物干し竿 「竿やー~竿竹はいりませんかぁ~」 今日も軽トラックで竿竹売の声が 宝生寺団地に響いています 女の人の売り声だ たろうさんは甘いから 運転手まで女の人と思ってしまう 「声かけようかな いや止めておこう」 ともう一度考えます そ…

昔書いていた詩(93) 「青春」

青春 旅は青春の感傷 僕 独りのものじゃない 恋は始まりのないもの 愛は終わりの為に始まる 僕は クラゲの骨に向かって 弾道を描いて 飛ぶ弾丸の軌跡を たった今 知る 例えば 鮮血それが 生きている証明で 俺だけの特権 おい だがお前 何故 愛も 青春も ない…

今書いている詩(93) 「たろうさんの如意棒」

たろうさんの如意棒 朝から猫が盛りのついた 鳴き声で騒いでる そんな季節なのだろうか 春なのかな たろうさんの如意棒は 力なく萎んでいます もともと精力がない上に 大きくもなく早漏気味で 自分の思うようにならない 困った如意棒ですね もう暫くセックス…

昔書いていた詩(92) 「インディアン 」

インディアン からすのように 悲しい色の髪の毛 遠くを見つめる 動かない眼 灰色の瞳 それらすべてが 彼らの歴史に そして今は支配者の前で 彼女は歌う 勇者は帰らない 西の国に行った 白い奴らの神は ピストルを持ってきた 掠奪するのに 躊躇わなかった 悲…

今書いている詩(92) 「たろうさんの灯油」

たろうさんの灯油 「お寒む小寒む 山から小僧が…」の 歌声を流しながら 灯油売りのおじさんが 今日もやって来ました たろうさんの家を 通り過ぎてしまったので あわててたろうさんは 呼び止めました 「家にもお願いします」 車はバックで戻って 来てくれまし…

昔書いていた詩(91) 「意識」 「監視塔」

意識 鉄の心の中にも 紛れ込めない 俺の意識がある 輝けるものは 真実か 豊かなものに 病根はないのか いつも 哲学者の 言葉はどうして 砂漠のように 不毛に聞こえるのか 俺は 考える 語る 朝の デザートのあとで そうだ 女には真実があったさ だが 輝けるも…

今書いている詩(91) 「たろうさんの夢」

たろうさんの夢 ピアノが立っているリビングに 幼い時からの娘の写真が 額に入って飾ってある いっぱいある ピアノはもう引かれない 自動演奏も使われない 調律も何年もしてない 妻はひとりしか生めなかったのです 娘よお前は彼氏の前では 淫乱で子どもを5…

昔書いていた詩(90) 「銅版画」 「手」

銅版画 時間が過ぎてゆく 俺と云う存在の 哲学の中で まだ 寝ているように 何もしていない 俺は 俺を捕まえていない 俺の心は 腐食してしまった 銅板画のように 鈍い輝き 何もしない時が 過ぎてゆき 俺は テレビの前を 離れようとしない 俺は今日も 無職なの…

今書いている詩(90) 「たろうくんの夕焼け」

たろうくんの夕焼け 雲の隙間から 陽が差し込む 夕焼けの里が茜色に 染まるころ 「カア カア」烏が 勝手に啼くんだよ 昨日は元三大師の ご命日なのに 「カア カア」烏が 啼くんだよ トンビが グルグル廻っているんだよ 庭の菜園の大根も 冬菜も 早取り京一カ…