2013-09-01から1ヶ月間の記事一覧

昔書いていた詩(89) 「黒犬)」 「俺の心」

黒犬 旅立ちの日が 栗色の霧で包まれる時 僕は「さあ行くんだ」と云って 出かけるんだ つい今しがた 国道で目撃した あの光景が 僕の頭の中に へばりついているので 闇の中の死は 四匹の黒犬を 撲殺してしまい 今 まさに黒犬は魂の乱舞を 始めたから 僕の自…

今書いている詩(89) 「たろうくんの鶯(うぐいす)」

たろうくんの鶯(うぐいす) 正月2日の事始の日に たろうくんの庭の桃の木の下で 藪鶯(やぶうぐいす)が「チッチッチッ」と 啼いていました 鶯君まだ「ホーホケキョウ(ホー法華経)」と 啼けないんだね 悟りは先だね 「ホーホケキョウ(ホー法華経)」は ありがた…

昔書いていた詩(88) 「地下鉄」 「引込線」

地下鉄 古ぼけた都会の地下を 鋼鉄製の電車が 垂直に走っていた 座席には二人の女が 足を投げ出して 唇を開き 片手に 切符を 握っていた 「哲学者の考え方にはついてゆけないわ」 ひとりの女が言うと もうひとりの女が 着物を一枚脱いだ 「車掌も運転手もい…

今書いている詩(88) 「たろうくんの詩始め」

たろうくんの詩始め 山で「おーい 希望よー」と叫ぶと 「お~い 希望よ~」と小さく 帰ってくる 街で「希望よー」と叫んでも 返ってこない 雑踏の中から「失望ー 絶望~」と還ってくる でも信じている 屹度いる 新しい望みが生まれて 笑顔が溢れる友がいる …

昔書いていた詩(87) 「あなた」 「失踪者」

あなた 「どこかで あなたと合いました」 皆 そう言うのです でも いつどこで あなたと 出逢ったかと 聞いても 誰も 答えてくれないのです 失踪者 夏の緑の葉の 一層濃く 痩せ尾根を 下り終えた峠で 私は初めて あなたに お会いしましたが あなたは 道標に …

今書いている詩(87) 「たろうくんのお正月」

たろうくんのお正月 帯状発疹の後遺症で痛い たろうくんは考えます 人の痛みを知りなさいという 教えでしょうか 今までにない痛みの 毎日なのです 挫けそうになります あなたも痛みますか 身体ですか 心ですか 何時まで続きそうですか 薬で治りそうですか 私…

昔書いていた詩(86) 「宝石」 「猫」

宝石 ああ 我々の 眼は 澱み 悩みは深くて 地下の宝石の 原石にも 伝わらない 原石の眠りは いつ目醒めるのか 数千億トンの重圧の下で 生まれた原石は 今何処にいる 磨かれた美しさよりも 数万年の孤独の方がいいのか 喘ぐ 女の指先で 宝石は 考えるのです …

今書いている詩(86) 「たろうくんの大晦日」

たろうくんの大晦日 弱い朝日がリビングに 差し込んでいる 長椅子に寝そべっている たろうくんの耳元で ファンヒーターが 唸りを上げている 加湿器の蒸気が 真上にあがっている 静かな大晦日の始まり 昼を告げる時計が鳴る 陽が強くなる 部屋は暖房が要らな…

昔書いていた詩(85) 「扉」 「扉(2)」

扉 重い闇の扉を 青銅の鉾で 次々と突き破り 朝は遂に明ける 夜が あんなにも 深かったから 今日の光が 遥か彼方の 俺の未知の運命をずらし 宇宙の軸を傾かせる 俺は時間を逆転させるスイッチを ONにする だから 俺が此処に 存在することは 真実よりも 重い …

今書いている詩(85) 「たろうさんの娘」

たろうさんの娘 昨日の夜9時頃 娘さんの 携帯から「河原宿のあたりだよ」 と連絡がありました 娘の最初の里帰りです 腕の痛いたろうさんは 特別サービスで歩いて5分ほどの バス停まで車でお迎えです いつもは母親の洋子さんが 坂を下ってお迎えでした たろ…

昔書いていた詩(84) 「正美」 「マー坊」

正美 耳の 不自由な 正美は お昼の ボーが 足元から 聞こえると言う どうして 俺なんか 生まれたんだと 自問自答しながら 今 彼は 父母と 共に眠っている 空が 若い マー坊 パパのいない子は ひねくれ屋さんなんだろうか マー坊のパパはいないんだ マー坊は…

今書いている詩(84) 「たろうくんのフクロウ」

たろうくんのフクロウ 「あっ 今フクロウが啼きましたよ」 今年の春に来たフクロウ君です 「私は此処にいますよ 見守っていますよ」 「君は何処にいたんだい」 君のいない間のたろうくんは 大変でしたよ フクロウ君 「食べ物は十分ありますか」 「いろんな世…

昔書いていた詩(83) 「切符」 「切符(2)」

切符 切符を一枚 買ったよ 50円銀貨で 誰にでも買える 駅の売店で 売っている ハイライト煙草のようにね その切符を 指で ひっくり返したり 戻したりしていると 気がついたんだ きれいな女の人に すぐ惚れてしまう 自分に この切符の為に 自由を お釣りの…

今書いている詩(83) 「たろうくんの特効薬」

たろうくんの特効薬 たろうくんの症状を聞いていた 西寺方医院の理事長先生は 「これはもう特効薬しかないですね」 この薬は11月に承認された 最も新しい薬だそうです まるでたろうくんを 待つていたような薬です 不思議ですね この薬を開発してくれた皆さ…

昔書いていた詩(82) 「山男」 「梶原杉」

山男 街の中を歩いている 自動車に乗っている 駅の階段を昇り降りしている 机の前に座っている 何処にも山の欠片はない 山を放棄した男 頭の中で山に登るんだと云っている男 何時から君はそんな男に 変わってしまったんだ 絶壁の上から 墜落する明日を 見て…

今書いている詩(82) 「たろうくんの風船」

たろうくんの風船 希望をいっぱい吹きこんだ 風船を持って 娘は家を後にした 行く先は彼氏との新しいアパートへ たろうくんの風船は萎んでいます でも大丈夫たろうくんの風船は 奥さんの洋子さんが 新しい空気を入れて膨らませてくれますよ 娘さんは直ぐに帰…

昔書いていた詩(81) 「掘る」 「クライマー」

掘る パワーシャベルが 土を抱え込むように すくいあげる 地球の 皮をはぐ 鋼鉄の腕 地表に 爪痕が残る 誰の 傷よりも 生々しい クライマー 太陽を浴びて 岸壁が 黄褐色に 微笑む 緩慢な 褶曲層が 切断されて 岸壁に 生まれ変わったのだ 一枚の スラブに ボ…

今書いている詩(81) 「たろうくんの会話」

たろうくんの会話 台所の妻と娘の会話 妻「私の運はいいのかな?」 娘「お父さんを引いたので悪いのじゃない!」 妻「でもスクラッチで7万・5万当たったし?」 たろうくん「家も買えたし 私はお母さんで良かったよ!」 あなたの会話ならどうなりますか 今…

昔書いていた詩(80) 「缶詰」 「運転手」

缶詰 急斜面の雪が融けかけ 代伐された 切株が顔を出す 雪の上に切断された 象の足のような 木目が黄土色に浮かぶ 北側の凹んだ急斜面に 濾過された朝の光が注ぐ マッチ箱よりも 小さな幸せの為に また何時か失われる日が来る 空は底の抜けた缶詰 溶解したク…

今書いている詩(80) 「たろうくんの動物園」

たろうくんの動物園 動物園の動物達は あなた幸せですか どんなに環境が良くても 捕らわれているのです 何代にわたって交配されて 飼育されているのです 本当に彼らはそれでも 幸せとあなたは思いますか 人間に見られるだけの 彼らの人生ってなんですか その…

昔書いていた詩(79) 「土手」 「雪」

土手 春は土手の青草の下で生まれる 村の娘は洋服を脱いで 草の上に横たわる 娘の腋の下でツルニンジンが 大きく呼吸する 陽炎はゆらゆら 若者の心は複雑なパズル遊び 回転する糸車よりも忙しい やがてゴッホの太陽が昇る 空から雲雀が墜落する 娘は女に生ま…

今書いている詩(79) 「たろうくんの苛立ち」

たろうくんの苛立ち 生活している 暮らしている 私もあなたも 息をいている 夢や希望はどうだろう すべて幻想ではないのか (時を写真で切り取れるか) こうありたい ああなりたい 思い巡らしても 実現しない思いは幻想ですね たろうくん考えが 「メビウスの輪…

昔書いていた詩(78) 「九月」 「少女」

九月 九月はオーガスト氏の月 夏が放物線の曲線を 描いて西に沈み 東より花紺色の 空を連れてやってくる月 柱の古時計が 何かの弾みに チクタク チクタクと 動き出しオーガスト氏と 共鳴している月 少女 貴女は娘にもなれない少女 ギリシャのヘレネスと イオ…

今書いている詩(78) 「たろうくんの道」

たろうくんの道 楽しい道を往くときは 広く感じる 辛い道を往くときは 狭く感じる あなたは今どの道を 歩いていますか 広い道は快適に車で行けますね 狭い道は注意が必要ですね 画布に広い道を描くか 狭い道を描くかは 画家の人生ですね たろうくんならば ジ…

昔書いていた詩(77) 「子牛」 「胸」

子牛 朝の街は一番いい ビルの谷間に 夜が蓄積されているようでいい 夜はまだ薄いサランラップを 何枚を重ねたように 生まれた子牛の身体に 纏わりついている キラキラと糸を引く液体のようでいい キャバレーの灯りとか街角の水銀灯 駅の点いたままの照明と…

今書いている詩(77) 「たろうくんの銀座」

たろうくんの銀座 たろうさん私は街を 行く当てもなく 汚れた服と少しばかりの 荷物を引きダンボールを抱えて 歩いているのに 幸せが必要でしょうか 何処に希望があるでしょうか 入浴出来なくて 赤照りした顔にも 明日は来ますが 毎日ねぐらを求めて 唯歩い…