今書いている詩(95) 「たろうさんの物干し竿」

   たろうさんの物干し竿

 「竿やー~竿竹はいりませんかぁ~」
 今日も軽トラックで竿竹売の声が
 宝生寺団地に響いています

 女の人の売り声だ
 たろうさんは甘いから
 運転手まで女の人と思ってしまう
 「声かけようかな いや止めておこう」
 ともう一度考えます

 そうなのですたろうさんは前にも
 洋子さんのいない時に
 駐車場の段差ブロックや風呂場の
 水漏れのマスキングを頼んだりして
 叱られたのです

 たろうさんの家の物干し竿はかなり
 痛んでいるのですが
 たろうさんは希望印の洗剤と柔軟剤で洗った
 洗濯物を干してもらいたいのです

 たろうさんは下着を畳んだときの
 あの優しい希望の香りと柔らかさが
 嬉しいのです

 あなたの家の物干し竿にも
 希望印の洗剤と柔軟剤で
 洗った洗濯物が干してありますか

 希望は物干しに吊る下がっていますか
 物干し竿は痛んでいませんか

 「カインズで買えば安いのよ」
 帰ってきた洋子さんに言われて
 「ああ 買わなくって良かった」と
 心の中で思った
 たろうさんでした