昔書いていた詩(94) 「闇」

 
    闇
 
 夕闇は まだ 木の陰に座っていた
 ある者は 葉の裏に行け
 ある者は 洞穴に行け
 
 光は 薄くなり
 尾は 断ち切られ 断ち切られ
 消失をやめない
 光は 闇に捕食され
 ほとんど 両肺がない
 
 天地は逆転した
 「呼吸法を変えねば死ぬな」
 ジャイロコマも 此処では通用しない
 つつじの花が 変わらない 柴木
 
 人々はスイッチを捻る
 壁にあるのや 杭にあるやつを
 構わず 右に捻る
 所々に 電灯がつく
 
 「闇はまだらになったようだな」
 「いくらか 安心できるね」と
 どこかで 誰かが 呟く