昔書いていた詩(95) 「海」 「時計」

    海
 
 ひとりで 海へ行った
 僕の 記憶の海は
 汗と塩の 繋がりでしかなかったが
 風が吹くと 荒い磯の波は
 白く砕けた 夢に変わる
 
 イガイガ頭のウニは
 岩の 割れ目に
 ひっついていたが
 それが 僕には
 必死の 努力のように
 思えて溜まらない
 
 僕は黒砂の上に 立っていたが
 雲の切れ間から 光がさす
 その時 海が
 蒼く 見えた
 
 
    時計
 
 俺は時を 取り戻した
 時計を 右手に嵌めたから
 久しく忘れていた
 金属の 重さが
 そう思わせたのだ
 
 だが 間違えるな
 今日も俺は 朝寝坊をして
 昼頃起き出して 飯を食う
 
 俺の右手には まだ時間が
 嵌め込められて いないから
 つい 柱時計を見る
 
 今 俺を 縄のように
 縛り始めたのは
 右手の腕時計