昔書いていた詩(103) 「失業者」

失業者

 
 働いている時 
 僕は潜在的失業者だと思っていたら
 今度は本当の失業者になった
 職安に失業保険の認定に行ったら
 僕と同じ顔の男がいて
 同じ認定番号を持っていた
 メガネをかけた心臓の悪い
 紹介係は黙って判を押していた
 僕の名前を呼ぶので
 ハモニカのようなカウンターに腰かけると
 紹介係の男は「いい仕事なかったですか」と聞くのだ
 僕は「ええ 一応見ましたが」と言って黙秘する
 「もう少し待つか」と紹介係は受給証に判をおしてくれた
 コンクリート製で箱型の建物を出ると
 六ヶ月が過ぎていた
 僕の首にはプラカードがぶら下がっていて
 認定番号000330 それが僕の名前だった
 僕はその名前を頭や手や足に振り分けてみたら
 僕は数字そのものになって
 黒板の上に白墨で書かれていた
 誰もいない教室で 子供たちが呼ぶので
 僕が答えようとすると
 僕は分解して風に飛ばされた
 それからの数年は風になって遊んだ
 気がついてみると僕は又仕事を失って
 今度は認定番号のない失業者になっていた