今書いている詩(94) 「たろうさんの地球」

  たろうさんの地球

 朝と夜の始まりと終わりは
 地の果てでヘラクレスが
 いまだに大きなカーテンを
 開け閉めしているのだ

 太陽は東から西に
 動いているのだ
 たろうさんは海を
 あまり見ないので
 水平線が平でないなんて信じない

 名工は「…水平の水が曲がっている…」
  と知って発狂する
 たろうさんの尊敬する
 埴谷雄高さんの「死霊」の
 一節だが信じたくない

 そうでしょう
 車で運転していても
 丸いなんて思わない
 山坂があるだけです

 たろうさんは帯状発疹で
 寝ていても寝床の下が
 丸い地球だなんて思いたくない

 ああ 大昔のこの世は
 何処までも平の世界が懐かしい
 川の水は地の果てで
 滝のように落ちているのだ
 
 「それでも地球は回っている」
 ガリレオが最後まで言っていた
 あんたは偉いが
 たろうさんの夢を
 最初に壊した男だ

 ブラジルのクリチバ
 joseさんとは
 長い糸電話で
 繋がっているのだ

 たろうさんは今も
 自分の夢と空想の世界を
 信じながらも
 現実の世界で
 帯状発疹の
 特効薬を飲んでます