昔書いていた詩(97) 「暗号」

暗号

 
 もう話すことなんか
 何も必要でないのに
 欲しいものは腹話術の
 人形でなくて
 君の 24歳の肉体なのに
 
 三千年の 遠方より
 やってきた 愛のネロには
 パピルスの 暗号解読書と
 計算尺がいるのだ
 
 醒めたコーヒーのそばで
 「ミルク入らないよ」と云って
 出てきた世界で
 初めての 俺と君の夜は
 吸い取り紙の中で
 七百二十分の眠り
 
 その時 誰もいない道で
 この俺が言う
 「おいお前 どうして 手も握らないんだ あの時に」
 唇と舌で生まれた
 D・Jに教わったように
 
 君を頭の中でで犯し 
 垂直増幅管に接続した
 俺の言葉のパルスが
 水平に同期され始めたから
 二人の寝物語は まだ先の先だ