昔書いていた詩(101) 「夜明け」

夜明け

 
 眼を ゴリゴリさせながら
 出かけた 夜明けは
 俺の瞼のように 重い
 
 過去の駅で 片目の犬が
 歩いていると 犬殺しが
 車で やって来るのを
 俺は 見る
 
 西へ走る 木製の電車が
 トンネルを潜る
 俺は 夜明けの モグラになる
 
 辿りついた 存在の谷は 紅葉で
 ダム工事の 人夫は 大声で叫ぶ
 「此処にダムができまーす」
 
 彼らの前で 俺は
 資本家と 労働者の
 関係を 力説し
 トテ馬車を 強奪して
 東に 脱出する
 
 「この トテ馬車は 何処まで行くつもりだったんだね」と
 俺は 今更ながら聞く
 御者は 黄色の歯茎で ムチを振りながら
 「夜も 昼も ない道を 真直ぐ 走るんです
 夜明けは まだまだ先ですよ」と言う