昔書いていた詩(130)

 
    夢(3)
 
 掘立小屋の家に
 天の使いがやってくる
 家の外に飼い葉を置く
 これらは総て竹を束ねて
 運んだもの
 母の一族を中心に
 輪を作って
 呪文を唱えながら
 舞っている
 父だけが江戸から日光へと
 現実的な声で歌ってる
 僕の手には妙な文字の
 書かれた輪がある
 僕は目覚める
 
 
    夢(4)
 
 左手に蛇を持ち
 右手に蛙を持ち
 僕は水槽の中の
 赤ん坊を見ている
 水槽のなかには
 魚神がいる
 
 
    天啓
 
 暖かい春の日に
 薄くなった
 冬の被膜を破って
 僕の内心に
 菜種色の
 風が吹く
 
 ヒヨドリが啼く
 垣根の檜が
 深呼吸する