今書いている詩(207)


    たろうさんの夏蔦(つた)

 雷雨であなたの所へも
 雨水が届き

 夏蔦も少しずつ
 わたしの家を覆い
 灼熱の真夏の
 日差しから
 守ってくれる

 そんな日が来ているから
 わたしはあなたにも
 優しくなれる

 壊れた雨樋から
 突き出た屋根に
 雨粒が激しく
 音を立て注いでいる

 そんな夜に
 娘が帰ってくる

 台所から夕餉の
 美味しい匂いがする
 ガンモと春巻きを
 洋子さんが
 娘のために作っている

 洋子さんは楽しそう
 こんな日がいいね
 いつまでも続くと
 たろうさんは思うのだ
 明日は娘を
 西八王子駅まで送る

 夏蔦くん
 もう寝てますか
 早く剥き出しの
 家の土台の
 コンクリート
 覆って下さいね