昔書いていた詩(133)

   歩く

 
 山靴の音が峠の道標に
 釘ずけになっていた
 冬の間 木霊は谷の岩陰で
 冬眠している
 僕は山旅を終えてから
 ずうーと神経を
 すり減らしてきたが
 都会の雑踏のなかを
 今日も歩いている
 
 
    花の四月
 
 辛夷が咲き 桜が咲く
 入学式を終えてばかりの
 一年生が帰ってゆく
 
 春 四月は 始まりの月
 すぐに桜は散ってしまうが
 胸に付いた 名札は真新しい
 
 背中に黄色の カバーをつけた
 ランドセルを背負い 
 その中に希望を一杯詰め込んで帰ってゆく
 いつまでも続けと窓辺で僕は見ている