昔書いていた詩(127)

   背負う

 
 桜の咲く日に
 僕は二歳半になる
 娘を背負う
 
 団地を横切り
 歩道を歩くと
 春風が暖かい
 
 僕の背中で
 娘が歌う
 
 僕は娘の重みを
 背中に受け止める
 
 娘の半分の人生しか
 僕には残っていないだろうが
 娘は僕の数倍の
 未来を持っている
 
 毎年 桜は咲き
 僕も 娘も 歳をとる
 
 娘は順調に育ち
 そして 僕は確実に
 残りの人生を
 減らして行く
 
 妻も 父も 母も そうして
 生きてきたから
 
 娘が僕の今の
 歳を超える頃には
 僕も 妻も 残りの
 人生を送るだろう
 
 
    ぶらんこ
 
 里美がゆれる
 お父さんがゆれる
 交互にゆれる
 天地がゆれる
 欅が枝のまま
 立っている
 
 里美がねむる
 お父さんがねむる
 星もねむる
 
 大いなる
 意志を持って
 宇宙の闇は続く
 
 われら親子
 共に歩み進む