昔書いていた詩(45) 「言葉」 「泳ぐ」

   言葉

 

 

 俺が 辺り構わず

 

 灰色の 言葉を撒き散らすのは

 

 北の斜面で 凍結し

 

 動かぬ 風のように

 

 冷酷な 血液の高まりを

 

 拒否する為だけであろうか

 

 

 

 ああ 今日も俺は

 

 ただ虚しくなる為に

 

 仕事に出かけてゆく

 

 其処では お前の言葉も

 

 俺の言葉も 鮮明ではない

 

 

 

 俺は自分の家に向かう

 

 昼と夜の境界線を越える

 

 主のいない家は 動かぬ風のように

 

 凍えている

 

 おお 反乱それが 俺達の合言葉

 

 

 

 

 

    泳ぐ

 

 

 

 冬だ 燃える葉の

 

 季節を見送り 冬だ

 

 灰色の樹の見える

 

 その根元に 冬だ

 

 夏に 熱い空気の塊を

 

 忘れた肌が 震えている

 

 

 

 電車の踏切を越えて

 

 アスファルトの溶けて

 

 一直線に伸びる国道

 

 南海の海で

 

 パプア人のように泳いだ

 

 

 

 海は眠っている

 

 砂も 波も

 

 だが おお コブシの樹の芽の

 

 膨らむ頃 俺の胎内では

 

 夏と冬が 山椒魚のように

 

 両生している