昔書いていた詩(2) 「的」



 春が洋弓の弦を離れる矢のように
 やって来ても 
 私は独り佇んでいる
 
 未来行きの無人駅の改札口に 
 そっと切符を出す 
 しまった私は行き先を間違えたかと
 考えてみるが遅い

 空気の抜けたバレーボールが
 ゆっくりと転がるそして 
 貴女はいつも二人連だけど 
 私は独り

 夢の中でもう独りの私が目覚める
 無人電車に乗っている私と 
 空想のレールの上の貴女

 電車の窓から高速道路を 
 囚人護送車に乗せられて 
 老人がゆく

 私は目覚めるまで 
 何度も寝返りを打つ
 気がつくと 
 戸口まで冬が来ている