今書いている詩(392)
今書いている詩(392) 「たろうさんの義母」
住んでいた家を売って
義弟は栃木に引っ越すという話しから
体の不自由な義母の
迷走が始まった
隣の義妹の所から義姉へ
そして妻の所への繰り返しが
少し呆けてかなり耳の遠い
義母には辛い事であったらしい
具体的に話が決まるまでは
兄弟の間で話し合いも行われた
10月の末に我家に来たときには
ひどい精神状態で義母は
ソファーから動かずに毛布を被り
食事も厭がり 泣いているように見えた
呆けた老人にとって住む家が
変わるのが一番良くないそうだ
義母は嫌々病である
誰と話しているのか盛んに仏佛言って
自分の世界に入っている
洋子さんも判らないように思えた
義母が座るために中古のソファーを買ったが
その上で寝泊まりしていて動かない
退屈だろうからとケーブルテレビの
時代劇専門チャンネルをかけてある
一時具合いが悪くてこのままでは
どこかの病院か施設に入れようとしたが
救急車でないと何処も受け入れてくれないのだ
その義母は娘が加藤君のお母さんの実家の
法事に行って買ってきた饅頭を食べて
元気になり始めた 嫌々病も少しあるが
これなら12月まで「此処にいた方が良い」と
洋子さんに言った
90歳に近い義母の現実は厳しい
元気になってくると切ない選択を
しなければならないからだ
「あんたのお母さん今日も仏佛言ってるなぁ~」
元気になってきたのだろう声が大きくなってきた
どうにかトイレには自分で行けるのだ
食事も一緒に食べるようになれた
「たろうさん三途の川を渡るまでにはしがらみという衣を
何枚も脱がなければいけないのだよ」
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