今書いている詩(381)

    たろうさんの模造刀

 細い若木が立っている
 青年が凝然と 見ている
 父と同じ修羅を内在している

 手に刀を持ち鞘を払う
 振りかざす 斬りかかる
 手応えが柄にズーンと響く
 刀が曲がる そうなんだ
 これが模造刀の限界で
 わたしなんだ

 ごめんね若木君
 昔はわたしも知らなかったんだ
 自分の弱さも 強さもね
 そして君が生きている姿もね

 夢を見るんだよ
 刀を差してバスに乗っているのを
 わたしには過去の時代の
 属性が続いてるんだ
 それはたぶん侍の血だろうね

 君は存分に手足を伸ばして
 繁っているだろうね
 やがて季節は巡り
 冬支度だろう

 もう模造刀もないよ
 理由もなく切りつけた
 わたしの修羅の季節も終わって
 還暦を過ぎた65歳の
 唯の老人がいるだけだ

 「今日も何とか生きたなぁ~
  フクロウ君」