今書いている詩(351) 

  「たろうさんの海溝」

 深海のアンコウ君
 何を思案する
 何を佛仏つぶやく
 「寒い 冷たい
  腹減った 明日なんかない」

 チョウチンアンコウ
 自前で発電し
 明日を照らす

 灯りは疑似餌
 ぶり下げられた
 希望を魚が
 パクリパクリ

 高感度カメラの眼を持った
 優しいこころの男が
 揺れる船の上で
 「あなたの灯り此処まで
  届きました。ありがとう」
 と言いながら 
 居眠りをする
 うなずく 自得する

 深い 深い
 海溝の底を
 海流がゆっくりと
 幸福の国へ向かって
 流れる

 誰も見たことのない
 真実も
 巻き込まれる
 再浮上する

 「男は盲目の
  神を愛している」