今書いている詩(271)

   たろうさんの桃の木 (守る)

 あなたは13年前に
 越してきた真夏に
 幹を下半分からズバッと
 切られて傷跡が変色していたね
 次の夏にはひこばえが生えて
 生きているのが分かったよ
 嬉しかったね

 あなたは庭の東南の角に
 植えられていたんだ
 其処は一番大切な場所だね
 『古事記』に伊弉諾尊
 鬼女に桃を投げつけて
 追い払ったとある
 邪気を払うんだね
 中国では仙木・仙果だね

 何故あなたが切られたのか
 経緯は分からないけれど
 「桃栗三年柿八年」の諺通りに
 復活したね
 実を付けたあなたを見つけて
 嬉しかったよ

 いつも毎年桜の頃に咲く
 あなたはお寝坊さんだね
 今は切り口も癒えて分からない
 ほど元気だから
 あなたの使命はこの家と
 たろうさんを守ることですよ

 袋を掛けないと美味しい桃は
 食べられないけど実は
 アリさんにあげるから
 桃の木さん
 「洋子さんと娘も宜しくね」