今書いている詩(190)

   たろうさんの湯船

 おい小さなクモ君
 何処から入ってきたんだい
 そんなタイルの壁に
 しがみついて
 
 落ちては登りまた落ちる
 君の姿勢も不安定だね

 折りたたみのフタを広げたら
 あらっ 君は湯船の中へ
 仕方が無い 
 茹でグモ君になっちまうね
 助けなくちゃ~ね

 たろうさんはふやけた手で
 外へ出してあげます

 身体を拭きながら
 「このままでは やはり死んじゃうか」
 手の中に追い込んで
 虫除けの網戸の窓を開け
 外に放り投げます

 小さな音を出して
 クモ君は格子に当たりました

 「仕舞った でも良いか
  外に出たみたいだからね
  あとはシィ~ラない」

 自分で運命を切り開きなさいよ
 「洋子さん 薬ぬって下さいねぇ~」
 上半身裸の湯船からでた
 たろうさんの最後の日課です