昔書いていた詩(188)

    空気
 
 虫が飛びまわっている
 蜘蛛は糸を斜めに吐き
 銀色に輝く巣を張る
 なんでもないように
 空気は存在し
 僕は今日も
 窓ガラスの外を眺めてる
 自由人だからではない
 ただの失業者
 書くこともできずに
 一日を所在なく過ごしている
 ファンヒーターの上に新聞が
 テレビの上にファミコン
 食卓の上にグレープフルーツが
 僕でない誰かを待つている
 玄関から甲高い声が聞こえる
 娘たちかなあ~
 ドアが開く
 娘が入ってくる
 「女王様のお帰りですよ」
 部屋の誰かがそっと
 僕に囁く