今書いている詩(185)


    たろうさんの娘(6)

 クマが好きだから
 壁に絵が貼ってある
 人形やぬいぐるみグッズがある

 クマのカレンダーが
 12月で終わったのが
 そのままにしてある

 その下のエレクトーンの
 上に今年のカレンダーが
 置かれている

 娘は新しい生活をするために
 去年の12月の末に
 この部屋を卒業していった

 置かれたカレンダーを
 たろうさんは壁に
 止めようとして辞めた
 たぶん洋子さんも
 同じようにして
 辞めたのだろう
 
 娘のベッドに横になる
 前の壁にまだ服がいっぱい
 掛かっている
 月に4回ほどは帰ってくる
 
 静かに横たわっていると
 壁の2つの時計の音が
 部屋中に規則正しく重なり響く
 かなり気になる
 この部屋では眠れまい
  
 机の上は昨日洋子さんが
 片づけ今はパソコンが
 ぽつんと置いてある
 テーブルや其処ここに
 まだ化粧品がある
 
 窓の外を見ると
 木蓮が咲いている
 桃の花も咲いている
 その下に菜の花
 
 空が暗くなり
 遠くで稲妻が光る
 高尾山のあたり
 数秒の後にゴローと
 雷鳴と大粒の雨

 この部屋での娘の生活は
 どのようであったのかと
 窓の外を眺めながら考える

 たろうさんと洋子さんも知らない
 娘の生活がある部屋
 帰って来るとこのベッドに
 潜り込んでダラーとしている娘

 たろうさんと洋子さんの
 愛するひとり娘の
 部屋のベッドに
 今日はたろうさんが
 静かに寝ています