昔書いていた詩(184)

    立鏡と埃と朝
 
 立鏡は見ている
 部屋の中を一日中
 無言で見ている
 
 私は時々それに気がつき
 鏡の中の自分を恥ずかしげに見る
 
 部屋の中で動くものがある
 微妙に動くのだ
 空気に混入している埃だ
 朝の光線に光っている
 
 私が動く 彼らも動く
 机の蛍光灯が
 鳴っている朝です
 
 
    手袋
 
 乳白色の雲が
 ベランダ越しに
 公園の向こうまで続いている
 物干し竿の上に牛乳パックが
 呪いのように被せてある
 
 昨日も今日も見た景色だが
 大きな季節の変わり目では
 風も温かく吹き
 春の気配を振り撒いている
 
 机の上にに忘れられた
 片方の赤い毛糸の手袋が
 静かに寝ている娘を
 待っている