今書いている詩(182)


    たろうさんの楽園 (2)
 
 寝ている リビングから見える
 菜の花の上に 
 桃の枝が伸びている
 花が咲いている 
 カーテンが揺れている
 風が山の雑木林に当たり
 ご機嫌が悪い 唸っている
 スズメは無神経に話している
 椿の咲く餌台の隣で

 「餌を与えてくださいね 洋子さん
  わたしは足が痛いので」
 ガタイの大きなたろうさんは言います
 この所の調査で膝が痛いそうです 
 全く柔ですね
 
 まだ ススキも枯れて 山も萌えない
 家の土台のコンクリートがむき出して
 夏ツタは息を潜めてる
 すべて 冬と春の季節の端境期
 たろうさん早く菜園を耕して
 ジャガイモを植えてくださいね

 里美さんは帰って来るなり
 玄関に蹲る 生理痛だという
 「そんな格好でいるからだよ」
 たろうさんは下駄箱の上の
 ホッカイロを渡します
 「ほら言われただろう」と加藤君

 冬タイヤを車庫において
 「帰りに寄ります」といって
 二人で買い物に出かける
 冷蔵庫に洋子さんがあげる
 肉が眠っています

 あれから5時間経つのに
 未だ戻りません
 ワンワンと犬が啼いて通ります

 菜園を春の風が吹き渡ります