昔書いていた詩(181)

   記憶

 
 僕は僕の上に記憶を重ねてみる
 厚く漆器のように重なった記憶が
 時代の接着剤で固まる
 
 僕は夢の中で溶剤を溶かすように
 記憶を回復する
 
 苦い過去よ再び僕の頭の中で
 コップの中のシロップのように沈め
 
 飲み込まれた甘い喜びは
 忘れられがちだから
 再び呼び戻して
 二重構造のパン焼器の中で
 焼いてしまおう
 
 長い記憶が紐のように
 スルスルと僕の足元で
 解けて黒く固まる
 僕の心は又
 不安に占領されてしまう