昔書いていた詩(160)

   夏の遺物

 
 夏のなごりのセミの片羽根
 蟻が死骸を片づけている
 
 夜通し鈴虫が啼き
 夜明けは遅れる
 
 ススキの穂を引き抜いて
 子供が駆けてゆく
 
 僕は疲れた夏に
 サヨナラを告げて
 街の騒音の中で
 立ち止まる 歩く
 
 貴女は誰に
 サヨナラをしたのだろうか
 河原に散乱するゴミも
 寂しそうだ
 
 少しづつ短くなった昼間の
 影が伸びてゆく夕暮れ時に
 
 僕の新しい出発とは何だろう
 妻と娘がいても判らない
  九月です