昔書いていた詩(159)

 
    ツクツク法師
 
 ツクツク法師が 
 棒杭の上にとまって
 啼いている
 九月になっての日曜日
 蝉も死期が近いと
 だんだんと木の下に降りてくる
 私と娘は捕まえようと
 少しづつ近寄ったのに
 自動車が来て
 ツクツク法師は飛び去った
 
 
    水泳教室
 
 ああ 風が吹いてる
 静かに吹いてる
 南側の僕の部屋を
 黙って吹き抜ける
 今日 僕は風の香りをかいだ
 柔らかく微かなものだ
 
 水泳教室で戯れる
 小学生の歓声が
 学校の壁に反射して
 僕の部屋に飛び込んで来る
 その時風はガラス戸越しに
 立ち止まって聞いていた
 
 
    栗飯
 
 九月の空に
 雨が降っている
 夏が終わり
 秋の始めの雨だ
 
 北風が吹いてくる
 北側のベランダの
 窓ガラスが微かに
 震えている
 
 僕は夢の中で
 キノコ狩りをした
 
 妻が栗飯を作ってくれた
 秋は深く静かに
 進行している