昔書いていた詩(158)

   予兆

 
 スズメが雨上がりに
 餌をついばんでいる
 暗い空から雨粒が
 又落ちてくる
 
 僕は昨日の夢の中で
 出会った赤子に思いを馳せている
 そのとき僕は幸せな気分だったが
 今日の空は九月の長雨に
 曇って泣いてているようだ
 
 横田基地に向かう
 飛行機の爆音が部屋に
 飛び込んでくる
 
 自転車置場に
 黄色の自転車が
 バンドルを曲げサドルの裂け目が
 ポカーンと口を開け
 少女の帰りを待っている
 
 僕はひとり部屋の隅で
 誰にも読まれない
 詩を書いている
 
 遠くからサイレンの音が近づいてくる
 娘と妻はどこに行っているのだろう
 僕の不安も近づいてくる