たろうさんの大地
銀座の昭和通りのアスファルトの
上に立って日を浴びている
日はビルの隙間から
遠慮がちにたろうさんの
頭をめがけて差し込んでくる
春の日差しは暖かい
背広の背中を通して
身体に触る
光が染み込む
この場所で逆立ちが出来たら
たろうさんは大地を
ヘラクレスのように
支えているのだが
でもたろうさんは
逆立ちが出来ない
運動会の天地無用に
参加できなかった
運動は図体ばかり大きくて
何も出来ない
何故 大地の上に立っていられるのか
何故 物体には万有引力があるのか
ニュートンは発見したが
それがどうなのだ
たろうさんは昭和通りの
隙間に立っている
棒杭にもなれない