今書いている詩(155)

    たろうさんの大地

 銀座の昭和通りのアスファルト
 上に立って日を浴びている
 日はビルの隙間から
 遠慮がちにたろうさんの
 頭をめがけて差し込んでくる

 春の日差しは暖かい
 背広の背中を通して
 身体に触る
 光が染み込む

 この場所で逆立ちが出来たら
 たろうさんは大地を
 ヘラクレスのように
 支えているのだが
 でもたろうさんは
 逆立ちが出来ない

 運動会の天地無用に
 参加できなかった
 運動は図体ばかり大きくて
 何も出来ない

 何故 大地の上に立っていられるのか
 何故 物体には万有引力があるのか
 ニュートンは発見したが
 それがどうなのだ

 たろうさんは昭和通りの
 隙間に立っている
 棒杭にもなれない