今書いている詩(150)

    たろうさんの自転車
 
 家の横のドクダミの咲く所に
 たろうさんの自転車が放置されてます
 乗られなくてタイヤのゴムがひび割れて
 錆が全体を覆っています

 自転車には思い出がいっぱいあるのに
 たろうさんは車の世界です
 隣の西村さんの坂の上の空き地にも
 子供たちの自転車が置いてあります
 西村さんは引っ越してゆき
 暫く帰る予定がないのです

 子供たちに愛されて
 力一杯漕がれた記憶は
 もう錆付いています
 昔はチェーンが伸びて
 ガラガラ音を立てて
 走っていたものですね
 今は空き家ですよ

 数年前ですがその空き地に
 歩き始めたばかりのかわいい女の子が
 お父さんと来て
 コンクリートにしゃがんで
 指さしてお話しているようでした

 そこにはドングリが落ちているのです
 嬉しくなる光景でした
 娘もドングリを小さなポケットに
 いっぱい詰めていましたね
 あの子はもう入学でしょうか

 他人の子が大きくなるのは早いものです
 たろうさんの孫ができたら
 ここでお話してくれるでしょうか
 ドングリと一緒にね

 その頃には自転車の思い出も
 たろうさんからは
 屹度 忘られていますね
 いまは自転車が寂しく
 独り言ですよ