昔書いていた詩(122)

  七つの素子

 
 現実を超える思考が
 僕らにあってもよい
 アダムとイブが
 追い出された楽園の
 林檎の赤が
 遠い記憶の素子となって
 僕らに引き継がれているから
 僕らと君達の間を流れる
 河の岸辺で黒鳥が遊んでいる
 
 「何にもしないよりもましです」
 誰かがそう独白しても
 太陽は東から昇り
 西にやがて沈む
 僕らは毎日をそのように
 観念的に生きてきたし
 これからもそのように生きるだろう
 
 時空をワープすれば僕らは
 数十万年の彼方にでも行けるが
 その時に僕らにとって最も大切な物を
 見出せるだろうか
 
 僕らの精神電流が
 意志となって歴史を
 逆流する時に出会えれば
 僕らの想像は現実と
 交叉して夢ではなくなる
 
 僕らの意志を超える思考が
 かつて有ったように
 僕らの存在も夢ではないのだ
 
 
    明日仏
 
 転生する僕らは
 夢のなかでその位置につく
 
 遠い昔 僕らが不協和音を
 奏でた頃に 僕の祖先の一人は
 湯上谷村の武将であった
 
 戦いの日々 生と死を超越していれば
 僕の祖先も哲学者になれた
 
 過去から現代に舞い戻り
 現実の僕となっても
 思考回路の図式に
 それ程の変化はない
 
 転生した僕は同時に輪廻も行う
 或日 一匹の蟻を助けて
 救われかけた男のように
 僕も何処かで救われるだろうか
 
 暖かい春の日 ヒヨドリが啼いている
 数十億年の太陽が
 僕の背中に降り注ぐ
 その光のなかで僕も君も生きて来た
 陽光も電流と同速度で進む
 
 娘よ僕の意思を継いで
 この時代を生きてくれ
 僕は君がいるから独りではない
 
 君は現実の時に表出して
 新しい思考回路を組み立ててほしいのだ