昔書いていた詩(67) 「春雷」 「潮風」

春雷

 
 巨大な大都会の午後に
 春の女神が
 風神雷神を連れてやってくる
 人々は大古の昔に帰り
 怯えて呪文を唱える
 木々は薄緑の小枝を垂れ
 うやうやしく女神を迎える
 青い閃光と轟きのうちに
 春雷の儀式は終わる
 大都会に春風が吹いている
 
    潮風
 
 海を渡る潮風が
 小麦色した君の肌に
 南国の夢を運んでくる
 一直線に蒼い大地が
 何処までも続いている
 貝殻が敷き詰められた
 緋の絨毯に君は立ち続ける
 黒い君の瞳に
 藍色の海が微笑む
 ガジュマルの林を吹き抜ける風が
 君の唇に
 そっと触れて通る