昔書いていた詩(65) 「母(タツ)」 「声」

母(タツ)

 
 成長した 息子に 幼き日の
 面影を 思い出している
 母の姿がある
 子供の 健やかな
 健康を願う 心が 滲み出る
 目尻が 微笑んでいる
 年月を 風雪に 耐え
 艶のなくなった 肌に
 あかぎれの手に 顔のしわに
 成長した 息子を 喜ぶ
 母と女の 姿がある 
 
    声
 
 星を 散りばめた 天の川に
 鹿の 鳴き声と
 ムササビの 啼き声が 
 天を衝く
 小屋の 窓辺に
 吊るされた ランプの 灯りが
 黒い闇に 滲み込む
 若木の 臭いが
 春風に 乗ってくる
 コトコトと 窓を 叩く
 夜風が 明日の
 旅立ちを 祝福している