昔書いていた詩(62) 「山の秋」 「夢」

山の秋

 
 鉛色の枝や 赤く変身した
 葉っぱの 交叉する 透明な秋
 ブナ林の 鳥の 
 啼き声の 鋭さに
 光の ナイフが
 谷を 切断し
 山頂の 岩棚は 燃えている
 夜は 尾根道を 降りてくる
 山の旅人は 燃やし続ける
 煙は 谷筋を 登り
 過ぎゆく 時の中で
 踊るのは 炎と人 人と炎
 そして 僕は独りだ
 旅人の 寝床は 落葉
 河原で 石ころは
 もう寝ている
 
    夢
 
 若者には 世界を
 駆け巡る 夢がある
 今日も 明日も 想う
 広大な 原野
 果てしない 海原
 天と 地の 境に
 何があるのか 知りたい
 神に 尋ねる  祈るのではない
 朝 昼 晩
 神との 対話は 続く
 宇宙の 空間に 
 想像力が 無限に 広がってゆく
 ビックバンの 始まりまで
 辿りつく