昔書いていた詩(44) 「朝」 「光」

 
 俺は前を向いている
 後ろに朝の 香りが近い
 赤土の丘 裸体の樹木
 あのあたりで 夜が
 まだ 浮遊しているのだろうか
 鳥も啼かない 中洲にある浮島で
 俺はお経を 誦えている
 
 そうだ 何も見えないが
 確かに 夜明けは 近い
 闇の 連帯が終わり その中で
 色の広がりが 始まっているのだ
 
 もうすぐ 俺は捕える
 地上30㎝で 光と浮遊している
 朝を きっとこの手に
 その時 朝は 生まれたばかりだ
 
    光
 
 深い 
 一筋の 
 流れ
 碧く
 沈む 
 光の糸
 その中で
 誰も見ない
 閉ざされた 
 光の深層
 その跳躍の
 栄光を
 見る
 夜明けだ