昔書いていた詩(43) 「実験室 」 「ネオン」

  実験室

 

 

 俺は頭の中で

 

 さかんに光の量子のことを

 

 考えながら

 

 振り子の周期率を 数える

 

 

 

 眼の奥で

 

 平均値が充満している

 

 ああ 隣の机では

 

 固有抵抗の測定と

 

 発熱量の実験中

 

 

 

 時々 教授のマイクが

 

 机の上を歩く

 

 「俺には理解できない」と

 

 何度も呟きながら

 

 振り子の往復を数える

 

 俺のいない実験室は

 

 シーンとしている

 

 

 

 

 

    ネオン

 

 

 

 覆われた工場群の

 

 闇に主張する ネオンの輝き

 

 「東京の女は 美しいかも知れないが」と

 

 私は呟く

 

 

 

 夜は何処で眠りに就こうか

 

 ベンチのない公園で

 

 八月の蠅が

 

 アスファルトを舐めている

 

 緑色の風を残して

 

 夏は終わったのだ

 

 私はかろうじて 息をしている