昔書いていた詩(40) 「瞬き」 「年輪」 「秋に」

瞬き

 
 星の尾の長く揺れて
 一滴のしたたり落ちて
 その瞬く星の光
 しずくの一滴
 天の黄道を見ないで
 地上に消えた人の
 涙の白く震える夜
 
 どの村にも どの街にも ある
 木々の煩雑さ
 水銀灯のポールの 金属の言葉
 ああ、魚のいない川の流れと
 虫の鳴かない秋だ
 空だけが生きているのかも知れない
 
 
    年輪
 
 木は一年という区切りを知らない
 ただ緩やかな光と温度の
 感触の中で
 秋というおぼろげな季節を知っている
 
 光が葉を燃やし
 風が葉を裏返し
 烈しく葉が変貌する月
 山が燃える 
 おい お前はギラリとした夏を忘れたのか
 
 今は眠っている程
 柔らかな太陽 そして 光だから
 田螺も 泥鰌も いない 田圃で
 稲の切り口が 山を見て笑う
 そんな季節 誰もが 一人だ
 
 
    秋に
 
 星の揺れる駅に
 トランペットの独奏
 闇は夏の思い出を 蘇えらせ
 狂気の夏であったろうかと 復唱する
 俺は、その時期 自分を
 見失っていた気がする