昔書いていた詩(39) 「求道」 「写真」 「ベル」

求道

 限りなく 道を求めて
 今日を旅ゆく 人よ
 貴方の 喜びと悲しみの
 裏では 神々の
 田舎芝居の 幕が開き
 出演者に許しの 機会が与えられるから
 現世の僕の仕事は カーテン引き

 或日の午後 男は上を向き
 女は下向きに 歩くから
 僕は天空に 銅貨を投げ
 占ってみる
 表には 真実 裏には 偽りが
 貼りついでいるはずだが
 僕の手から 銅貨はこぼれ
 少し残っていた 
 希望も すり抜ける


    写真

 ふらあーしゅと云う
 言葉の響きを 見つけたら
 遠い国を 見つけたように 悲しい

 子供のころ 四月の村祭りの
 舞台を飾り付けた 杉の中から
 三文役者の入っている ドラム缶風呂を 覗いたり 
 スクリーンの 裏側から 映画を見たり
 祭りの終わった朝 お金をひろいに行ったりした

 子供たちは皆 成長して
 記念写真の ふらあーしゅ カターン
 遠い国の ふらあーしゅ カターン


    ベル

 背中で ベルが鳴る
 蒼い 靴下を 履き
 足を整えた 女がひとりいる
 止まる 走る
 陽を浴びている
 女はいない
 暗い国へ 走っていく
 突然 海鳴りが聞こえる