昔書いていた詩(35) 「梟(saeさんに)」 「先祖」 「炎上」

    梟(saeさんに)

 家のすぐ裏山で フクロウが
 ホッ ホー ホロツクホ― と啼く
 フクロウは誰を 待っているんだろうか
 それとも 寂しいんだろうか

 啼き声を 言葉に変換すると
 「私は 此処にいるよ 私は 見ているよ」と言っている
 僕は呟く
 「君に 癒やされているからね 又、来るんだよ 
  君の止まっている枝は 僕の心の止まり木に 繋がっているからね」と
 
 僕の裏山で フクロウが啼く夜は 
 貴女が存在し 僕の希望が 
 再び沸き上がる 夜です


    先祖

 富山湾の うねりに 招かれて
 僕は遠い故郷を 訪れる
 神通川の 畔で
 百年前の 僕の血族が
 真言を 唱える

 僕も父も 国の厄介者で
 僕は国を 罵倒する側
 呻き 沈み 流転の果てに
 無縁墓地に 眠る
 
 ああ、それが僕の 運命なら
 今から、逆転させる為の
 時計のネジを 捲こう
 そして、自分の思想と
 自由を 放下する

 
    炎上

 僕の家が 燃える 燃える
 遠い記憶の底で
 くすぶり続けていた
 僕の家が 燃えるのだ

 消しても 消しても 
 天から ほのほ
 ああ、僕の知覚の 盲点で
 僕の家は 発酵し続けていたのだ

 だから、この現実は
 僕の 夢の 中の 又、夢
 そして、僕は 時の流れに
 逆らい 矢を放つ