空虚
フィルム会社の煙突は
九月の風に揺られてる
年老いたボイラーマンが窯口に
夏の廃棄物を投げ込む
空に拡がる白煙の中を
クジャクが飛ぶ
街角を曲がった屑拾いが
今 秋に気づいた
早朝
カラビナに繋がっていた秋が
岩場のハーケンと共に抜ける
切れなかった ロープ
街にクライマーが帰る
季節風の吹き出しは
夜空の星の瞬きと共に
雪を運んでくる
その下で道票は 眠っている
雪ぴの張り出しが止まる朝
風が静かに逆転する
無人小屋に火が灯る
麓で誰かが
おおあくびをする
春が来たんだ
物置の山靴は
まだ眠っている