今書いている詩(9) 「菜園の仏陀」

    菜園の仏陀
 
 釈迦の出家の動機は幼少の頃に田畑の虫を
 ついばむ鳥を見たことによると言われる
 
 朝 
 
 秋の彼岸に太郎さんは
 自宅の菜園を耕します
 ミミズが掘り起こされます
 プランターの土の中には
 カブトムシの幼虫がいました
 大根と冬菜 プランターには
 早取り京一カブを播くつもりです
 
 仏陀が横でそれを見ておられました
 
 昼
 
 太郎さんはキュウイの棚の下にある
 洗面器の水を替えます
 猫が畑に来ました
 追い払います
 太郎さんは知っています
 水浴びに来たヒヨドリ
 この猫に襲われたて
 羽が散らばっていたのを
 
 太郎さんは木も草も
 切ったり刈ったりされるより
 そのままがいいと思っています
 それで草陰に隠れていた猫の
 餌食になったのです
 
 夜
 
 太郎さんはインターネットの
 エロサイトに接続中で
 時間を忘れています
 
 後ろから覗き込んだ仏陀
 微笑みます
 「此処には私の仕事がある」と
 気づかれた一日でした
 
 10日後に仕事から帰った
 太郎さんは洋子さんに
 「早取り京一カブの芽が出たかな」と
 思い出したように聞きました