今書いている詩(8) 「光明」

光明

 
 太郎さんと洋子さんの夫婦は
 暗く長い眠れぬ夜を過ごしました
 その理由は洋子さんの会社の
 健康診断で胸にシコリがあるから
 婦人科で診てもらいなさいと
 言われたからです
 
 「乳癌かも知れない どうしょう」
 二人して悩みました
 太郎さんが会社から帰ると
 嬉しい知らせでした
 唯のシコリだったのです
 娘にも言えない辛い夜を
 夫婦で笑いました
 
 長い宇宙への旅に出た
 太郎さん 洋子さん
 夫婦の乗った宇宙船の光は
 何処までも続く暗黒の
 闇に拡散して
 自分たちの宇宙船だけを
 照らすばかりです
 
 誰も見ていない 知らない
 無明の世界です
 光明のあるところへ
 辿り着きたいそれが
 夫婦の願いでした
 
 遠くの地球からそれを
 白髪の増えた娘さんの夫婦と
 子供達が眺めていました