昔書いていた詩(5) 「起床」 「疾走」 「訪問者」

起床

 夢の中で飛び跳ねる僕
 朝起きるとただの人
 学校には中退が有るけど
 人生にはそれがない

 何の欲望も失うと
 卵ガラのような
 壊れた日々の始まり

   疾走

 鋼の筋肉を身に纏った若者よ
 素晴らしき時代を生きているか

 オートバイを自在に駆使して
 大地を疾走しているか

 お前のギアにはバックがあるか
 お前たちのハンドルには過去があるか

 だが お前たちは知らなくてはいけない
 時は過ぎ未来は確実に摩耗するのだと

 だから今 お前たちのアクセルを力一杯
 ふかしておくがいい
 お前たちは私の こころのライダー

   訪問者

 唐松林の その奥で
 四人の男は 乳色の霧を 
 コーヒーに注ぎ込み
 チンリン チンリン 鈴付けて
 山行く娘を待ってます

 鳥も啼かない 北の尾根
 風は三月 舞いながら
 見知らぬ歌を唄います

 沢沿いの タラの芽は少し膨らんで 
 黙ってそれを聞いてます

 娘の姿は見えませぬ
 男の姿も見えませぬ

 風は三月舞いながら
 見知らぬ歌を唄います