今書いている詩(376)

     「たろうさんの鉈(ナタ)」

 街では鉈(ナタ)を腰につけている
 大人にも出逢わない
 そんな格好をしていたら
 すぐにお巡りさんが飛んでくる
 鉈を手にして歩いたらパトカーがくる

 山仕事もなくなったので
 田舎でも出逢うことがない
 キャンプの時に使うくらいだ
 鉈は凶器にしか使われないから
 悲しいね

 少年の頃にわたしも鉈を持っていた
 父は鞘鉈とノコギリを腰にぶら下げ
 晩年は高尾山に仕事で行っていた

 わたしの少年時代には
 鉈を研ぐのが楽しかった
 鉈の先が凸があるのであった
 山で薪を取るのが日課で
 風呂や竈にヒジロで
 燃やすためである

 雑木林はどこでも
 下刈りが行き届いて
 枯れ木を切るのが許されていた
 山には小径があり何処へでも行けた
 山仕事の大人もいた

 蘖(ひこばえ)の曲がった木で
 木刀を上手く作るのが自慢だった
 そんな時代も もうない

 「政治家さん 役人の無駄遣いに
  大鉈を振るって下さいね 
  わたしの代わりに」