今書いている詩(311)

    たろうさんの夏(終章)

 ザワザワと一心に
 桑の葉を囓り終えた
 おこさま(蚕)のように
 わたしも時を囓るが
 消化できない
 糸も吐けない
 昔流した涙と
 遠い夏の記憶に
 しがみついてる

 山の彼方で
 八月の夏が弾けて
 茜の空に染まり
 夕焼けとなって
 映えてる

 誰かが叫んでる
 青年のわたしだ
 「夏が終わるんだよぉ~」
 彼は夏の終わりを
 信じられない

 海鳴りのように
 聞こえていたセミの
 幻聴が消えて
 秋がくるのも

 わたしの心にも
 静かな闇があるんだ
 「おい俺は お前の影だよ」