今書いている詩(285)

たろうさんのユニオン

 今の時代に闘うあなたに
 勝利はあるのか
 闘わないわたしに
 負けは来るのか

 誰が敵で
 誰が味方なのかと
 叫んでいた
 半世紀前の夏には
 わたしも熱かったよ

 今は眺めているだけ
 情熱は眠っている
 海の底に沈んでいる
 撃沈された米国製の
 原潜のようにね

 「日和見(ヒヨッテル)」
 懐かしい言葉だ
 きっともう死語だろうね
 時代の変遷は若者を
 蟹工船の読者に
 育て上げた

 不確実の季節に
 裏の畑で失業の実が
 熟しているよ
 それをもいでユニオンを
 結成するあなたは
 ひとりではない
 素晴らしい仲間が
 支えているよ

 わたしは海峡の
 寒流を泳いで定年の
 家まで辿り着いた
 65歳の未組織の労働者
 階級意識など持たない男さ

 「洋子さん お金持ちと貧乏を
  額縁に飾ってあるかい」