今書いている詩(241)

  たろうさんの望遠鏡

 半世紀も前のことですが
 天体レンズを買い
 ダンボール紙を丸めて
 望遠鏡を作りました

 夜空を見ないで
 景色を見て楽しんでいる
 少年でした
 前に住む神主さん
 ごめんなさい 
 覗いていました

 絵が逆さまに映るので
 浮いた気分でした
 夜空の星も月も
 反対に見えていたのです
 こころも反対の少年でした
 真実はいつも反対に映る

 掘っ立て小屋の
 家を壊したときに
 望遠鏡を火にくべて
 反故にしたので

 溶けたこころのレンズに
 遠い記憶だけが
 いまも逆さまに
 映っています