昔書いていた詩(214)

   穴

 
 娘が保育園で
 書いた私の絵が
 書棚においてある
 太郎のたの字が
 途中まで書いてある
 
 私のライティングデスクには
 単三電池が1本だけある
 窓には自動車の騒音が
 聞こえる穴が一つ開いている
 
 私は机に座り
 大人の雑誌を盗み読みする
 修飾された現実だけが
 私の瞳に映っている
 
 私には苦い過去がある
 魂を売ってしまった
 思い出があるのだ
 今少しだけ詩を書いて
 魂を修復した
 
 私は家中の窓を閉めて廻る
 空気が遮断されて
 私の家も私も眠る