昔書いていた詩(212)

   アリ

 
 梅雨の時期と言うのに
 空梅雨が続いていた
 降り始めたら
 もう3日も雨続きだ
 団地の盆踊り用の
 やぐら作りも今日はやらない
 
 娘も妻も出かけている
 自分ひとりで過ごすといっても
 不器用な中年にはせめて
 ビデオで裏物を見るくらいだ
 同じことの繰り返し
 娘の笑顔に勝るものはない
 
 夢では薬を集めて
 人を殺す薬を作った
 
 寝起きは良かったのに
 今日も会社に行けずに
 職を失った
 私小説でも書こうと
 原稿用紙を3枚書いたら
 もう次が出てこなかった
 
 それでも今日の妻は
 どこか変に優しい
 昨日友達の通夜に
 行ってきたからだろうか
 
 妻と娘が通夜に出かけた後で
 南側の6畳の部屋に
 アリの大群が侵入してきた
 殺虫剤を撒いて
 薔薇の木を切り倒して
 畳の上のアリはつぶした
 
 殺生な一日の終わりだった
 戦争だ戦争だと呟いて
 悔やんでいる
 私がいる