昔書いていた詩(157)

   夢(21)

 
 垂れ込めた空から
 雨粒が落ちてくる
 それは昨晩の夢の続き
 暗い夢だったが
 過去のつらい記憶に
 つながっていた
 
 僕は前世では英雄であったが
 頑なな心ゆえに貴女の
 大切な青磁の壷を
 割ってしまった
 その壷の底に
 貴女の真実の愛が
 隠れていたことを
 初めて知るが
 壷は修復できない
 私たちの心のようだ
 
 目覚めて僕は
 壷の底で一緒に
 澱んでいた僕の
 正体にも気がつくが
 夢か現実か思い出せない
 僕の記憶は途切れ途切れで
 尾形乾山の贋物茶碗のような
 鈍い光沢を放っている